ツマキチョウの鱗粉観察

慌しくヒメギフチョウを追った次の日、4月20日。故郷の天気は寒く曇り空でした。
チョウの散策は諦めて、飯田市美術博物館の電子顕微鏡観察教室に行ってきました。

この時期のチョウである、ツマキチョウの鱗粉観察です。
ツマキチョウの魅力と言えば、オスは表翅の先端のオレンジと裏翅の緑のグラデーションが人々を癒します。

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この日、ご対応して下さったのは学芸員の四方さんでした。
今年、チョウ類保全協会でもご講演をされた、蛾の研究をされている方です。
鱗粉観察前に、整理されていた蛾の標本を見せていただきました。
地味な翅色は擬態が目的であることや
同じ種類なのに個体差が大きく、尾(生殖器)の形状で区別することなど解説して頂きました。
茶色もグラデーションが素晴らしく綺麗で、蛾も思ったより魅力的なことに気付かされました。

ツマキチョウの鱗粉観察は、標本にしていたものの朽ちてしまったオスの翅で行いました。
まずは実体顕微鏡による観察です。倍率30倍の世界です。
写真は接眼レンズ越しにiphoneで撮影していますので、画像の鮮明さには欠けます。

表翅の先端のオレンジの部分の境界です。
びっしりと敷き詰められた白、オレンジ、黒の鱗粉、ここまでは想像していた通りですが、黒い鱗粉のエリアに
銀色(冷静に見れば灰色)の鱗粉の島があることが分かりました。

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後翅裏の濃い緑のグラデーションの部分です。
まず気付かされたのは毛が多いことです。もともと胴体近くは毛が多いのですが見たのは翅のほぼ中央。
少し意外でした。
春型のチョウは毛深いものが多いと四方さんは言われていました。春の寒の戻りの中体温を保護する上で必要だと思いますが、翅の中央付近にあるのは何故なのでしょう。熱伝導性が影響するのでしょうか、疑問です。
鱗粉は濃い緑地に、白の鱗粉の飛島が有り、黄色い鱗粉が縁取っています。さらに緑地には細かな白黄色の鱗粉が散りばめられています。そしてこちらも銀色(灰色)の模様が見えました。
この微妙な色使いと配置が、人々を魅了しているのでしょうね。

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次は電子顕微鏡(SEM)です。観察場所は後翅裏の赤い四角で囲った部分です。

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まずは350倍です。
鱗粉の幅、および先端の形状がまちまちでした。以前観察したキタキチョウの表翅
の整然とした並びを想像していましたので意外でした。
幅は50~100μmです。
ただ、チョウも翅の位置により形も異なりますので翅全体がまちまちだとは限りません。
おそらく表翅は整然と形も揃って並んでいるのではと思います。

裏翅が鱗粉が規則正しく並んでいないことは、立体的にも感じ、擬態で葉っぱの中に溶け込む効果が有るのかな
と思いました。

鱗粉の数を概算してみました。
この画像は250×360μmの面積でありおよそ40個です。
仮にツマキチョウの後ろ翅の面積を160mm2程度とすると77000個ほどの鱗粉があることになった。
翅4枚の表裏を計算すると一頭のチョウの翅に約60万個ほどの鱗粉が存在することになる。
精度は悪いがオーダー的にはこんなものと考えて良さそうです。

重さはどの位なのだろう、と興味がまた湧きます。

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下画像は倍率を1000および5000倍に上げています。構造はキタキチョウと同様筋状の縦横の網目のような形状です。

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下は毛のある部分の画像です。
実体鏡とはまた見え方が違いますので印象が変わります。
鱗粉と鱗粉の間からすっと伸びている様子が分かります。
翅の上部に覆うことで鱗粉に物体が当たった時の保護の機能もあるのでしょうか。
それにしてはまばらな密度です。

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5000倍の画像です。
毛には筋状の線がくっきり見えました。新たな発見です。
鱗粉の長さ方向に走る筋状の線と外観が似ています。鱗粉も毛も同じ物質だと感じます。
筋には小さな楔状のギザギザがあります。
さて何か機能的な意味があるのでしょうか。

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実体鏡も電子顕微鏡も普段見ているチョウのミクロの世界として楽しめました。
何かにつけて鱗粉に合理的な機能を想像するのは、私の悪い癖なのかもしれません。
想像した機能を検証するのは難しいことでしょう。
それでも、チョウにまた違った印象が持てます。

美術博物館の名前は、宣伝にもなるとの事で書きました。
また四方さんのお名前については、お任せしますとの事でしたので、お礼の意味を込めて書かせて頂きました。
ご迷惑でしたらご連絡下さい。

楽しいお時間をありがとうございました。
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by MIYAKOUTA5040 | 2014-04-23 05:58 | 鱗粉観察 | Comments(19)
Commented by 22wn3288 at 2014-04-23 08:41
電子顕微鏡での鱗粉は見たことが無いので、興味深く拝見しました。
自然の妙 不思議ですね。
Commented by chappy at 2014-04-23 10:05 x
こんにちわ~♪
今回も電子顕微鏡で、普段見る事の出来ない世界を見てこられたようですね
なんだか生物の授業のような・・・・笑
裏翅にまで毛が生えているのにちょっと驚きました
細部にわたって緻密な作りなんですね
珍しく貴重な画像をありがとうございました(^_-)-☆


Commented by Blue bird at 2014-04-23 15:55 x
こんにちわ♪
 何時も訪問&コメントをありがとうございす。
 以前にも見れて頂きましたが、電子顕微鏡で見る世界は神秘の世界ですねぇ
 想像するものとは全く違っていて、驚きです。他の者も見てみたい衝動に駆られます。
  此方は気温も上がった天候も安定して来ました、此の気候がもう少し
 続いてほしいです。
 良い週末をお過ごしください。
Commented by だい at 2014-04-23 21:06 x
 うわぁ~! すごい! 凄いなぁ~! 自然の不思議!
こんなに緻密に作られているのですね! (@_@) ただただ驚きです!
Commented by Lapis-k at 2014-04-23 21:08
こんばんは。
前にも拝見しましたが、鱗粉はこんな風になっているのですね。
身近なツマキチョウということで、興味深く見せて頂きました。
四方さん、T林道でお会いしたことがあります。
Commented by iiiwana at 2014-04-23 21:14
こんばんわー。
ためになりますね〜
飛翔の写真を撮影するとき前に飛ぶ種と後ろへ飛ぶ種が居ます
ツマキチョウは後ろへ飛びますがこの翅の構造がそうさせてるような気がします
まばらな配置や網目構造は軽くするために出来ているような気がしますね
それに羽化した時から翅が乾くまでの時間を短くしているような
ギザギザは飛翔時の乱気流を防ぎ風の抵抗を和らげる為のように思いますがいかがでしょうか
とにかく凄いですね〜
Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-24 05:34
蝶・旅の友さん
たまにはこんな観察も面白いです。
チョウへの興味が深まりました。
Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-24 05:35
chappyさん
おはようございます。
鱗粉の数を計算するところが理科の授業のようですかね。
ついつい興味津々となりました。
Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-24 05:37
Blue bird さん
おはようございます。
普通の顕微鏡と電子顕微鏡では見え方が全くことなりますので
楽しいですね。
チョウ以外も見てみたいですよね。
Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-24 05:38
だいさん
おはようございます。
コメントありがとうございます。
自然の中の不思議、緻密さが見つけられて楽しい時間でした!

Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-24 05:40
Lapis-kさん
おはようございます。
ツマキチョウのあの色合いの不思議を調べたくてついつい鱗粉観察でした。
実体鏡の観察も微妙な色の重なりの世界を楽しめました。
Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-24 05:46
iiiwanaさん
おはようございます。
ミクロの世界もいろいろ楽しめました。
シロチョウは体を立てて、風を受けるように止まったり飛び立ちますよね。
翅のしなりをうまく使っていていますが鱗粉にもカラクリがあるのでしょうかね。
網目模様は翅を軽くすることと、
水の濡れ性を小さくするにはもってこいだと思いました。
楔のギザギザ、無いほうが機能的ではと思いましたが
乱流防止ですか。なるほでですねー。
いろいろ洞察してみると楽しいですよね。
Commented by HOUNOKI at 2014-04-24 08:21 x
おはようございます。
ツマキチョウの麟粉の構造がよく分かりますね。
どこか抽象画のような模様に、
惹きつけられますね。
2枚目の拡大写真、そままま額に入れたいくらいです(^^♪
刺激的な画像に目が釘付けでした。
Commented by ラ・フランス at 2014-04-25 00:01 x
こんばんは。飯田市美術博物館の電子顕微鏡、一般の人にも触らせてくれて、ありがたいですよね。あそこで銀メッキされた昆虫をみて、すごいと思ったものです。
四方さん、面白い方ですよね。まだ、正式に採用されていない頃ちょっとだけ話したことがありますが、あっというまに有名になってしまって、驚いています。
Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-25 05:38
HOUNOKIさん
おはようございます。
ミクロの世界も魅力が一杯でした。
実体鏡の画像はもっと綺麗に写しかったです。
電子顕微鏡写真、たまにはモノクロの美もいいですよね。

Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-25 05:42
ラ・フランス さん
おはようございます。
ラ・フランス さんの地元の美術博物館、いい所ですねー。
なかなか電子顕微鏡を一般にも触れさせてくれる場所はありません。
四方さんは蛾やチョウの話を楽しそうにされて、こちらも楽しくなりました。
Commented by ハニカミのえっちゃん♪ at 2014-04-26 07:08 x
おはようございます(^_^)
素晴らしい観察記録ですね!
蝶の翅は神秘的で奥深そうです♪ ちょっと想像を超えた世界でした(#^.^#)
お天気いいから今日もお出かけでしょうね(^.^/)))
Commented by MIYAKOUTA5040 at 2014-04-27 05:28
ハニカミのえっちゃん♪さん
おはようございます。
コメントありがとうございます。
ミクロの世界もたまにはいいですね。
機能は姪の結婚式で散策に出かけられませんでした。
今日は自然の中で楽しみます。
Commented at 2014-04-27 18:14 x
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